23. 「たかが」ポリエチレン「されど」ポリエチレン

◆ 製品を守る最も安い包装資材

ポリエチレンフィルムや袋の生産に携わっております私どもが日々感じますことは、「たかが」ポリエチレン「されど」ポリエチレンという言葉です。ポリエチレン樹脂は合成樹脂全般を見渡しましても正直一番と言って良いほど安い樹脂であります。しかしながら悲しいかな、我々の生産する袋をはじめとして包装資材は非包装物の輸送が終わってしまえば廃棄される運命にあります。よって、お客様から致しますとどうせ捨ててしまうものでもあり、少しでも安い商品をお求めになられるのは当然でもあります。

しかし、私どもの生産するポリエチレン袋は包装資材である以上「破れない」「漏らさない」「異物の付着がない」などの性能が大命題であります。言い換えれば、最も安い包装資材でノウハウの限りを尽くした製品の包装がなされる訳です。

折角の素晴らしい商品を私どもが製造した袋により汚れてしまったり、汚染させてしまったり、最悪破袋して被包装物が露出してしまっては商品はもとよりどんなトラブルが発生するか予測ができません。特に、当社では化学工業向け内装袋を得意と致しておりますので、トラック輸送中破袋が発生しますと一大事であります。しかし、このポリエチレン・ポリプロピレンなど私ども「汎用樹脂」と言う表現を致しますが、この汎用フィルムの分野でも日々新しい素材が開発されております。また、最近ではパッと見ただけではポリエチレンのような素材が、実は全く違った樹脂であった!! というケースが多々あります。それを分析するには、まめ事典2の「素材の分析」を行う必要がありますがこの項目ではあくまでも特性という面でお話させて頂きたいと思います。

まずは樹脂そのものの特性として「ある付加価値がある」ということ。 パッと見はまさにポリエチレンフィルムであるが実は全く樹脂が異なる場合、例えば、ゴムやエラストマーのように引張弾性力がある。非常に引っ張っても変形しづらい。破断しにくい(破れにくい)。耐熱・耐油性に優れている。次にはフィルムにある性能を付与するために樹脂が溶融している段階で添加剤や機能性向上のための有機・無機剤を混ぜ込む。俗に「練り込み」という表現する方法です。これは、着色や静電気防止剤や防錆剤・防曇剤・造核剤などが最たる例です。そして、二次加工によって付加価値をつける。多層化技術(共押し出し多層フィルム、ラミネート)やフィルムに二次的に縦や横方向に逐次延伸(伸ばす)をかける延伸フィルムやシュリンクフィルム、強度や透明性を向上させたりフィルム表面にコーティングや蒸着を行ったりする場合などです。

◆ 樹脂そのものの特性について

自社商品のPRになってしまうのですが、その例として当社の『ステアリングプロテクトカバー』が概当致します。『ステアリングプロテクトカバー』は自動車の整備や塗装工程の際に、車のハンドルに取り付ける使い捨てタイプの汚れ防止カバーです。今までの技術では、ポリエチレンチューブの両端に輪ゴムを取り付けてゴムの締め付け力でハンドルにフィットさせるように加工されていました。しかし、これでは輪ゴムの近くに皺が入ってしまい見栄えが悪いのとハンドルと一緒にカバーがついていって滑ってしまうのです。そこで、そのテーマを解決するべく開発したのが当社の『ステアリングプロテクトカバー』です。この商品はお蔭様で特許商品ともなった製品ですが、この例こそ全く新しい樹脂を利用した例です。開発経緯と致しまして、この開発のテーマは、

  1. 車の運転中の危険性もあるため滑り性の悪いフィルムであること。
  2. 自動車のステアリング(ハンドル)に取り付ける際伸びないとハンドルに取り付けられない。しかし、伸びきってしまうとハンドルから落ちてしまう。よって、伸び縮みするフィルムであること。
  3. 炎天下で自動車のハンドルへの長時間の装着もあり、一般の樹脂ステアリングを始め最近増える高級皮巻きステアリング等、フィルムからのブリードアウトによる添加剤等の転写による「汚れ」の付着が絶対に許されない。
  4. 整備や引渡しが完了した時点では、使い捨てである以上非常に低価格であること。

この4つが命題となりました。まず一つ目の滑り性ですがフィルムは通常は滑り性の優れたものが歓迎されがち(機械特性が良い)です。また、2つ目の伸縮性も厄介な問題で、ポリエチレンフィルムは伸びてしまうと縮む事はありません。伸びきってしまうのです。それならエラストマーを利用すれば良いのですが、3.の添加剤等の転写が問題であり、かつ4.の価格にもハンディーが大きくあります。

そこで調査の末、発見したのが今の『ステアリングプロテクトカバー』の素材です。最近では、「衛生」「抗菌」ブームで特に女性ドライバーには歓迎され、あるレンタカー分野や自動車ディーラー様では整備や塗装完了後、装着した状態で自動車をお客様に引き渡してその場で取り去るなど、修理や整備の品質体制の強化にも御利用頂いているケースもあり飛躍的に販売実績を向上させて頂いておりますが、まさに素材の選定の重要性を感じた案件でした。昨今では、さらに「抗菌剤」を練り込みさらに衛生面の向上させるテーマもある自動車メーカー様からも頂戴いたしております。こうなりますとこの素材へ練り込みを施し、さらなる性能を付与する複合型となります。このフィルムは、非常に柔軟性に富み肌触りも絹目。そして非常にスリップ性に劣ります。またある程度の伸縮性を持ちかつ、添加剤量が微量で本テーマに最適でありました。

結果から申し上げますと、元来本樹脂はこのような用途としての利用は始めての事で、現状では狭い分野でのみ使用されておりました汎用樹脂でありました。今回のケースはレアケースかも知れません。性能を満たせば価格が満たされない。また、その逆のケースも多々あると思います。一部の分野は別としてつくづく我々樹脂関連の者として感じるのは、やはり合成樹脂フィルムという分野は消耗品である以上『価格競争』の呪縛からは逃れないものなのでしょうか?