35.意外と難しいテーマ・・・・クリーンフィルムの防湿性

さて、冒頭のテーマ、クリーンフィルムの防湿性ですが、「意外と難しい・・・・」と名をうちましたが、今回のテーマはあくまでも『インフレーションチューブラー法』の範疇で考えてゆきたいと思います。

バリアー性能面だけを捉えますとラミネートフィルムまで広げれば、アルミラミネートフィルムや塩化ビニリデンフィルムをラミネーやコーティングしたりと、多彩な防湿性に優れたフィルムの選択が可能です。しかし、クリーンとなると後述致しますが問題点も多々ありインフレーションチューブラー法に限定して考えてゆきたいと思います。

さて、インフレーションチューブラー法で生産されたポリエチレンチューブは、その名の通りチューブラー(連続した筒状)状態で樹脂が金型より押し出され、巻き取りのテンションとエアーにより任意の寸法でポリエチレンチューブの幅が決められ製膜(インフレーション)されて、反物状に巻き取られますので、袋にしたとき袋の両サイドはラミネート袋のようにシールを施す必要がありません。よって、袋にするときの製袋工程では底部分のみをヒートシールしてカットするだけで袋が完成します。従いましてラミネートフィルムの様にさらに両サイドにシールを行う製袋機と比較すると簡素な機械での生産が可能ですので、低価格、小ロット、バリエーションの広い生産可能サイズ等々、特殊なバリアー性能の要求のない被包装物には最適な工法であります。

ただし、昨今の被包装物の多様化からバリアー性能の要求が高まり、インフレーションチューブラー法も単層から多層化が開発され、「3種5層」や「5種7層」のなどのチューブの生産が可能となってまいりました。

例えば食品包装など酸素バリアー要求がある場合は、多層化されるフィルム層の中にバリアー性能を持った、エチレンビニルアルコール(EVOH)を中間層に用い酸素バリアー性に優れたフィルムを生産する。突起物や真空パックなど強靭なフィルム強度の要求がある場合は、中間層に強靭なナイロンをサンドイッチした良く聞く言葉である「ナイロンポリエチレンフィルム」などが好例であります。

しかしです!!!! 酸素バリアー性能は、上述のようにラミネート素材に肉迫するのではありますが、『防湿性能』がなかなかそれらに及ぶフィルムが未だに開発されていないようなのです。以前は当社もチャレンジした事がありますが、塩化ビニリデンを二次的にポリエチレンチューブにコーティングしたり、有機系のバリアー素材を塗行したりするのですが、フィルムの伸びによるクラッキングで安定した性能が発揮できず断念した記憶があります。さらに、今回のテーマである「クリーン」となると、コーティング物の脱落飛散等々問題外であります。

現実に話を戻しますと、現行での防湿性対策としては高密度ポリエチレン(HDPE)層を挟みその肉厚を厚くして防湿性能を高める程度であります。ポリエチレン密度の高い原料を使用して防湿性の向上を図る手法です。

昨今の多彩なバリアー素材が登場する以前の我々の世代では、湿気を嫌う個別包装で、透明度の悪いゴワゴワしたポリ袋で包装されていたのを記憶しておられる方も多いかと存じ上げます。袋が厚過ぎて、なかなか手で開けられない・・・・・

これが高密度ポリエチレン袋(HDPE)なのです。

要は密度を上げることにより、低密度ポリエチレン(LDPE)より防湿性を高める・・・・という考え方であります。しかし、あくまでもポリエチレン系の素材であり基本的にはガスバリアー樹脂とは言えない素材の中での話であります。これが、冒頭での「意外と難しい・・・・」所以であります。

我々は、医薬品原体や医薬品包装用の袋を生産している関係で、クリーンという観点でこのインフレーションチューブラー法の優位性を実感しています。インフレーションチューブラー法の場合は、インフレチューブのエアー管理さえ徹底していれば、袋内面の清浄性は高いレベルで維持できます。一方ラミネートフィルムの場合は、

  1. ラミネート原紙の清浄性(ナイロン、PET、アルミ箔、シーラントLDPEやLLDPE等々)
  2. ラミネート工場(張り合わせ工程)の清浄性
  3. 製袋工場の清浄性

など、コンバーター一社でコントロールしきれない部分を多く含んでおります。また、クリーンというテーマ以外にも、生産ロット、生産サイズ、納期等も制約を受ける場合があります。

よって、我々クリーン分野として、お客様より防湿性・・・・というテーマを頂戴した場合、今まではインフレーションチューブラー法による「多層フィルム」。フィルム構成は、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン/低密度ポリエチレンという高密度ポリエチレンをサンドイッチしたタイプをご提案する位でしかありませんでした。さらにジレンマとしては医薬品分野においては、この防湿要求は結構多いテーマのひとつでもあるのです。

しかし、この高密度ポリエチレンは「イオン重合」であり、かつ塩素系触媒が使用されていますので、ステアリン酸カルシウム等が使用されており残渣触媒問題、そしてこれらがブリードしてしまい内容物の包装後パーティクル混入の原因となってしまいます。

袋の表と裏は無添加のポリエチレンを使用したと致しましても、これらの有機物は無添加ポリエチレン層を透過してしまうのです。よって、経時に伴い多量のパーティクルが発生してしまいます。さらに、これらはシールしている層間を剥離する傾向にありシール強度の低下にも影響してしまいます。

防湿性能は、本当に難しいテーマなのです。