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34.メタロセンフィルムとは?|特徴・用途・一般ポリエチレンとの違い


 フィルム加工業者の間でよく耳にするお悩みとして、
 ・『袋が破れやすい』
 ・『角ばった内容物を入れるとすぐに切れる』
 ・『強度を上げるために厚みを増したが、硬くなって扱いにくい』
 といったものがあります。
 
 これらの課題を解決する高機能素材として注目されているのが「メタロセンポリエチレンフィルム(mLLDPE)」です。
 一般的なLLDPEとの違いや特徴、用途について技術的に詳しく解説します。

メタロセンフィルムとは?

 近年、「メタロセン」という言葉を耳にすることが増えています。
 しかし、フィルム加工業者にとっては一般的な素材となりつつあるものの、まだ広く認知されているとは
言えません。

ポリエチレンの基本

 一般的に使用される透明なポリ袋(世間では「ビニール袋」と呼ばれることもありますが、正確にはポリエチレン袋です)の多くは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)で作られています。
 
 LLDPEは、エチレンを「重合」という化学反応によって製造します。
 この重合反応には、クロム系触媒やチーグラーナッタ触媒が一般的に使用されます。

メタロセン触媒とは?

 メタロセンフィルムは、従来の触媒を使わず、メタロセン触媒を用いて製造されます。
 これがメタロセンフィルムと呼ばれる理由です。
 
 メタロセン触媒は均一系触媒とも呼ばれ、以下のような特徴を持ちます。
 ・分子の長さが均一
 ・コモノマー(共重合体)をポリエチレン分子鎖に均一に結合
 ・狭くシャープな分子量分布および組成分布

メタロセンフィルムの特性

 分子量分布および組成分布が狭いことで、以下の特性が向上します。
 ・溶融粘度が高くなる
 ・溶融張力が低くなる
 ・引張強度の向上
 ・伸びの向上
 ・突刺強度の向上

 これにより、メタロセンフィルムは従来のポリエチレンフィルムと比較して、耐破れ性や耐突刺性に優れ、
強度を上げつつも柔軟性を維持できるという利点があります。
 メタロセンフィルムは、強度としなやかさを兼ね備えた素材として、さまざまな分野での活用が期待されています。
 また、下記の物性値は、メタロセンフィルムと従来型LLDPEフィルムの諸物性比較表です。
 一目瞭然ではありますが、メタロセンフィルムの数値が従来品を凌駕している事が覗えます。

比較物性表

項目
方向
検体
LLDPE
0.08mm
メタロセン
0.08mm
JIS規格
LLDPE
引張強さ
(MPa)
1
23.4
37.0
16.7以上
2
25.0
35.4
3
24.2
32.3
4
22.5
32.5
5
23.0
32.3
Ave.
23.6
33.9
1
28.5
42.5
2
26.0
33.2
3
25.3
34.5
4
26.3
35.2
5
25.0
34.6
Ave.
26.2
36.0
項目
方向
検体
LLDPE
0.08mm
メタロセン
0.08mm
JIS規格
LLDPE
伸び
(%)
1
331.3
522.8
250以上
2
368.8
491.1
3
351.0
454.0
4
313.0
454.3
5
324.6
447.3
Ave.
337.7
473.9
1
459.1
721.3
2
421.8
567.6
3
409.4
618.9
4
422.9
635.8
5
398.3
637.9
Ave.
422.3
636.3
※本データは測定値であり保証値ではありません。
 数値だけではイメージが難しい部分もあると思いますので、下の写真をご覧ください。
 高さ約18cmのボトルにメタロセンフィルムを押し当てた写真です。
 フィルムが全く破けずに伸びている事が覗えます。
 従来型のLLDPEフィルムは途中で破れてしまいました。
メタロセンフィルム
ボトルに押し当てると破れずに底付近まで伸びました
破れていません
拡大してもやはり破れていません!
L-LDPEフィルム
ボトルに押し当てていくと途中で・・・
赤丸の部分が破れてしまいました。
フィルムが破れて中のボトルが見えています。
 このように万能な特性を持つメタロセンフィルムですが、いくつかの課題も存在します。
 先ほど「溶融粘度が高くなり、溶融張力が低下する」とご説明しましたが、この特性が原因で生じる問題が『加工適性の低下』です。
 
 ポリ袋の製造は基本的にインフレーション法によって行われます。
 インフレーション法とは溶融したペレット(粒状の樹脂)を円形ダイスからエアーとともに押し出し、
風船状に膨らませた後、巻き取る製造方法です。
 
 この工程で溶融樹脂をエアーで吹き上げる際、溶融粘度が高すぎるとメルトフラクチャー(表面の乱れ)が
発生しやすくなります。
 高溶融粘度の樹脂を高速で押し出すと、『せん断応力が大きい状態で、せん断速度を高めながら流動させる』ことになり、流動性が乱れ不安定になります。
 その結果、フィルム表面が波打つ形状になり、厚みが不均一になるだけでなく、製品として使用できない場合もあります。
 また、溶融張力が低いため、バブル成型時にフィルムが垂れ下がる問題も生じます。
 
 さらに、製袋工程においてはヒートシール時の適正温度の範囲が極端に狭くなり、偏肉が発生している場合には「シール不良」が頻発し、不良品の増加によってコスト増加につながります。
 最悪の場合、お客様の使用時に破袋が発生するリスクもあります。
 

 では、メタロセンの優れた特性を活かしながら加工適性を向上させるには、どうすればよいでしょうか。
 方法としては、大きく2つが考えられます。

①分子量分布を適度に広げた原料を使用する

 言い換えれば、『加工適性を考慮した原料』を使用するということです。
 これは、原料メーカーが提供する特定の原料を採用することで実現可能ですが、『原料メーカーのノウハウへの依存』や『インフレーション機との相性』が課題となります。
 この手法では、適切な原料の選定が重要なノウハウとなります。

②従来型LLDPEとのブレンド

 加工適性に優れた従来型LLDPEを混合することで、メタロセンの弱点である加工適性を補強します。
 この方法ではブレンド方法や比率が重要になります。
 ・メタロセンの比率を上げるとフィルムの物性が向上するが、加工適性が低下する
 ・従来型LLDPEの比率を上げると加工適性は向上するが、フィルムの物性が低下する
 
 このバランスは天秤のようなもので、加工適性を維持しながら最適なブレンド比率を見極めることで、
フィルムの性能と加工適性の両方に優れた製品を生み出すことが可能となります。

●まとめ

 いずれの方法を採用するにしても、最終的にはノウハウの蓄積が成功の鍵となります。
 
 近年、環境負荷の低減が求められる中で、メタロセンフィルムの優れた物性を活かしてダウンゲージング
(薄肉化)を行うことで、環境負荷の削減が可能です。
 また、厚みを変えずにフィルムの物性を向上させることで、製造現場での課題解決にも貢献できます。
 
 従来型LLDPEは「画期的なフィルム」として注目されましたが、現在では一般的な素材となっています。
公式サイトはこちらから
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