37.RoHS 3.0とは?|2027年施行に向けた規制強化と対応ポイント
本記事では「RoHS 3.0とは何か?」「RoHS 2.0との違い」「2027年改正の内容」「企業が取るべき対策」をわかりやすく解説します。
RoHS 3.0は、EUによる有害物質使用制限(RoHS指令)の次期改正案で、2027年頃の施行が
想定されています。
RoHS指令の基本的な仕組みから、RoHS 3.0で追加が検討されている物質、そして企業が取るべき
実務的な対応策までをわかりやすく解説します。
電子・電気機器メーカーだけでなく、包装資材・樹脂・化学材料を扱う企業にとっても重要なテーマです。
●RoHS指令とは?|有害物質規制の基本概要
~EUが定める電気・電子機器中の有害物質使用制限~
一言で表すと、EU(欧州連合)域内で定める、『電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限』
です。
1990年代のEU諸国では廃電気・電子機器の大半が適切な処分・リサイクル等されておらず、大雑把な
焼却や埋め立ての影響で流出した化学物質により、土壌や水質への深刻な環境汚染が発生しておりました。
その対策の一環として、「リサイクルを容易にする」とともに、「有害物質の流出による人体や環境への
影響を防ぐ」ため、有害物質の使用自体を規制する目的で制定されたのがRoHS指令の経緯です。
●RoHS 1.0 ・ RoHS 2.0の規制内容
~RoHS 1.0(6物質)とRoHS 2.0(10物質)の違い~
2006年7月にRoHS指令により6物質の使用規制が課せられ、また2013年1月の改正にて4物質が
追加となり、現在は計10物質が使用を規制されています。
便宜上、改正前のRoHS指令はRoHS 1.0(ローズワン)、改正後はRoHS 2.0(ローズツー)と称されます。
(RoHS 1.0は、RoHS 2.0への改正に伴い廃止となっており、現在は参照することはありません。)
以下の表に、RoHS 1.0およびRoHS 2.0で規制対象となった物質とその用途を整理しています。
▽RoHS 1.0にて使用規制された物質
物質 | 最大許容濃度 | 主な用途 |
鉛 | 0.1wt% | 鉛はんだ、蓄電池、めっき、顔料 |
水銀 | 0.1wt% | 電池、スイッチ、計器 |
カドミウム | 0.01wt% | 顔料、合金、めっき、塩ビ安定剤 |
六価クロム | 0.1wt% | めっき、顔料 |
ポリ臭化ビフェニル(PBB) | 0.1wt% | 難燃剤、自動車用塗料 |
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) | 0.1wt% | 難燃剤として添加 |
▽RoHS 2.0にて追加となった物質
物質 | 最大許容濃度 | 主な用途 |
フタル酸ビス(DEHP) | 0.1wt% | 塩ビの可塑剤として添加 |
フタル酸ジブチル(DBP) | 0.1wt% | 可塑剤、接着剤、インク |
フタル酸ジブチルベンジン(BBP) | 0.1wt% | 塩ビの可塑剤、合成皮革 |
フタル酸ジイソブチル(DIBP) | 0.1wt% | 可塑剤、塗料、セルロイド |
上記がRoHS 2.0にて追加となったフタル酸エステル類の4種類で、プラスチック部分の可塑剤として
使用されており、接触移行性がある事で知られています。
RoHS 2.0では『フタル酸エステル類』という括りでの追加となりましたが、当時より使用制限リストへの
追加が検討されている物質があり、それが次のRoHS 3.0候補物質として推奨されています。
●RoHS 3.0とは?|2027年改正のポイントと追加物質
~新たに追加が検討されている物質~
2021年3月2日に欧州委員会から委託を受けた研究所より最終報告書が公開され、下記2物質をRoHSへの
収載を推奨すると結論付けられました。
収載を推奨すると結論付けられました。
~RoHS3.0候補予想物質~
物質 | 最大許容濃度 | 主な用途 |
中鎖塩素化パラフィン(MCCPs) | - | 難燃剤、可塑剤、コーティング、塗料 |
テトラブロモビスフェノールA(TBBPーA) | - | 難燃剤、ポリカ、エポキシ樹脂 |
~追加候補物質のリスクと用途(MCCPs・TBBP-A)~
①中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)
REACH規則 第25次SVHCリストにも収載されており、非常に難分解性・生物蓄積性が高い物質と
されています。
難燃剤や可塑剤としてプラスチックへの添加、ゴム、接着剤、コーティング剤などの他、金属加工時の
潤滑剤や冷却剤の添加物などとしても使用されています。
製品への添加だけでなく、製造工程での残留にも注意せねばなりません。
②テトラブロモビスフェノールA(TBBP-A)
REACH規則 第16次SVHCリスト収載のビスフェノールA(BPA)を臭素化することで生産され、
内分泌かく乱性、発がん性、生殖毒性が懸念されています。
BPAと同様、かつて難燃剤としての添加やポリカーボネート、エポキシ樹脂の製造に大量に
使用されていました。
●RoHS 3.0対応の具体策とリスク低減方法
~化学物質管理のポイント~
添加剤には何が含まれているか分からないものも多く、工程が進むにつれて使用する部材の数が増えるため、有害物質の分析や管理の負担はどんどん大きくなります。
また、メーカーによっては使用物質の詳細まで開示されない場合もあり、全てのリスクを把握することは容易ではなく、新たな有害物質の規制が次々と追加されるため、調査や再分析の手間も絶えません。
しかし、最初から無添加で管理された製品であれば添加剤による汚染の可能性とは無縁と言えます。
~無添加LDPEクリーン袋によるリスク低減~
本当に衛生性が求められる製品の包装材としては、無添加のLDPE(重合時の触媒不使用)を用い、
厳密に管理されたクリーンルーム内で製袋されたクリーン袋を選ぶことも、有効な手段の一つと言えます。
無添加LDPEのクリーン袋については製品ページにて詳細をご確認いただけます。
ご不明な点などあればお気軽にお問い合わせくださいませ。
●まとめ
RoHS 3.0では、従来の10物質に加え、難燃剤や可塑剤など新たな候補物質が検討されています。
そのため、今後は「原材料」「添加剤」「サプライヤー管理」まで含めたトータルな化学物質管理が
求められます。
対応の基本は、代替材料の検討とサプライチェーン全体での情報共有の徹底です。
RoHS指令はEU域内だけでなくグローバルな調達基準にも影響を与えるため、早めの体制整備が企業価値の
維持につながります。
※本記事の内容は2025年10月時点の情報に基づいています。
最新の改正動向については、随時公式情報をご確認ください。

