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3:改正RoHS EU2015/863 規制物質6⇒10

 いよいよ2019年7月22日からRoHSにて規制物質の4物質追加が始まります。
改正に係る内容部分に関しては簡単に記載し、あくまで包材メーカーの立場としての考え方や抑えなければならないポイント等を重点的に記述していきたいと思います。

・そもそもRoHSとは?

RoHSとは、『電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令』の事ですが、RoHSを説明する上でまず、必ずおさえておかなければならないのがWEEE指令です。WEEE指令とは、EU内において、環境汚染を防止するために電気電子機器の廃棄物を分別収集し、リサイクルを行うシステムを加盟国・生産者に義務付けているものです。つまり、このWEEE指令を円滑に、かつ容易に運用する為、また、環境汚染及びヒトへの被害を根本的に抑制する為に、電気・電子機器への有害物質の使用制限を取り決めているのがRoHS指令になります。
 

・何が対象か?

名前の通り、電気・電子機器が対象となっており、カテゴリとしては下記となります。
 
1:大型家庭用電気器具
2:小型家庭用電気器具
3: IT機器及び通信機器
4:民生用機器
5:照明器具
6:電気・電動工具
7:玩具、レジャー機器
8:医療用機器
 ・医療用機器
 ・体外診断機器
9:監視・制御装置
 ・監視・制御装置
 ・産業用監視・制御装置
10:自動販売機
11:上記カテゴリに適用されないその他の電気・電子機器(2019年7月22日~適用)
 
対象カテゴリは上記となっております。

・規制物質/規制濃度(最大許容濃度)

○鉛:1000ppm
○水銀:1000ppm
○六価クロム:1000ppm
○カドミウム:100ppm
○ポリ臭化ビフェニル:1000ppm
○ポリ臭化ジフェニルエーテル:1000ppm
●フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP):1000ppm
●フタル酸ブチルベンジル(BBP):1000ppm
●フタル酸ジ-n-ブチル(DBP):1000ppm
●フタル酸ジイソブチル(DIBP):1000ppm
 
規制物質は上記となっており、黒丸が2019年7月22日より追加となる物質です。

・追加規制物質(フタル酸エステル類)と包装資材

ここまで記述しましたのはあくまでも概要ですが、上記内容を見ていると「電気・電子機器が対象であれば包装資材メーカーは関係あるのか?」という疑問が出てきます。
まさしくその通りで、一見全く関係が無さそうに感じますが、意外にも潜在的リスクが存在しています。それはフタル酸エステル類の【移行性】によるリスクです。今となってはかなり有名な話になりましたが、フタル酸エステル類は接触による移行汚染が起きてしまうのです。どれだけ規制物質を考慮した製品でも、フタル酸エステル類を含んだ物に接触すると移行する可能性がある(金属のように移行しないモノもあります)のは非常に悩ましい事実です。つまり、包むモノにフタル酸エステル類が入っていれば、当たり前ながら製品に移行していくというわけです。

・ポリエチレンとフタル酸エステル類

 それでは、今回追加されたフタル酸エステル類が一体どのようなモノに使われているかというと、『軟質塩ビ(PVC)』中の可塑剤として使用されるのが最もポピュラーと言われております。一部PPやPE等のポリオレフィン系樹脂には触媒として数ppmレベルで使用されるケースもあると言われておりますが、可塑剤として使用されておりませんし、最終製品に含有される事を想定して用いられておりません。そのことから、一般的にポリ袋中に1000ppmを超えるフタル酸エステル類が検出されることは考えにくいと言えます。

・考えられるリスク

 では、PE製の袋であれば全く問題無いのか?と言うと、そういう訳でもなさそうなのです。それは、生産時~梱包までのPE袋と生産設備や資材との接触リスクになります。例を挙げると、生産されたPE袋を可塑剤としてフタル酸エステル類を使用している材質のモノに接触し続けた場合です。この時にはフタル酸エステル類を含有するモノから、PE袋への移行が起きてしまいます。これだけ聞くと恐ろしく聞こえますが、実際は『接触時間』『接触温度』『接触圧力』が関係していると言われております。勿論、長時間(何十日等)・高温(40℃ 超え等)・加圧状態(数十kg)であれば環境的には最悪で、フタル酸エステル類の移行を促進させてしまいます。しかしながら、PE袋生産における工程としては、ある程度室温が保たれている環境で製袋もしますし、数日間梱包せずに置きっぱなしという事も非現実的です。

・最後に

 フタル酸エステル類の移行汚染リスクについて多く述べてきましたが、PE袋に関してはPE袋自体の含有リスクより、生産設備や資材からの移行汚染リスク管理の方を優先するべきであると考えます。先ほども申し上げたように、実際には『接触時間』『接触温度』『接触圧力』が劣悪な状況に限るので、リスクとしては非常に考えにくいですが、このような潜在的リスクが存在しているという事は、理解しておかなければならない事実であると考えております。
 また、本当に衛生性を重要視すべき製品の包材としては、触媒を使用していない無添加LDPE原料にて、しっかりと管理されたクリーンルーム内で製袋されたクリーン袋を選定頂くのも一つの手段ではないか、と思います。 
 2020年7月からはREACH規則においてもフタル酸エステル類(DEHP,DBP,BBP,DIBP)の制限が予定されており、注目されている内容となっておりますので、引き続き最新情報をアップデート致します。