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21. 液体輸送について

当社では、ドラム缶やコンティナー、フレコンなどの重量物や液体物の輸送用内袋の製造を得意と致しております。
さて、一概に液体と申しましてもトマトジュースのような粘度(80cp)やポマード(50000cpに近い)など粘度もさまざまです。
また、内容物の充填温度、酸・アルカリ、油分、芳香族系有機溶剤を含むものや数限りなくあります。
 
それでは、それぞれのケースに分けて考えてみました。

◆ 耐酸性、耐アルカリ性に優れた素材!ポリエチレン!

ポリエチレンは、耐酸性、耐アルカリ性に非常に優れた素材です。
しかし、これはあくまでも素材の話です。

このような内容物を輸送するにはほとんどが、ステンレスコンティナーや樹脂ドラム、鉄ドラムとなるのですが、特に鉄ドラムのオープン缶の場合は内袋を使用されているケースが多々あります。
ただし、その際この内袋に内容物の充填時ピンホールが発生してないことが絶対条件なのです。
これは当たり前と言えば当たり前のことでもあるのですが、とても厄介なテーマでもあります。

ドラム缶に内装袋を装着時、外傷やピンホールが発生していた場合、時間の経過とともにドラム缶の内面は悲惨な状態になってしまいます。
また、ドラム缶への装着時点では貫通していない「フィルム」に付着した「皺」や「キズ」が内容物の充填や輸送中に次第にピンホールへと成長してゆくケースもあります。
たかがキズ、されどキズなのです。
「ピンホール」や「キズ」はさまざまな工程で入る可能性があります。

工程を振り返って見ますと、我々生産者の生産ラインで発生する場合です。
まず、製膜工程 (ポリエチレンチューブを製造する工程)でのさまざまな理由で発生するピンホールがあります。
原料起因の場合もありますし、生産条件・機械条件そして、ラインの中での打痕や物の落下、また作業者の時計や指輪等による外傷や製袋工程(袋にするための工程)へ移行する際に原反の耳部分(原反の左右の断面)への摺れ傷などが挙げられます。

そして、次の工程である製袋工程では生産機に接触して発生する場合や物の落下、作業者の腕時計や指輪などで打痕外傷する場合もあります。
要は不注意による傷です。

◆ お客様への納品後の問題

ドラム缶等に装着する際の外傷、作業者の腕時計や指輪などで打痕外傷する場合です。
これも上記と同じく、耳部分の打痕傷からピンホールへ発展するケースも多々あります。

ポリ袋もドラム缶用ともなりますと、袋サイズも大変大きく取り回しも楽ではないのも傷付着の理由の一つです。
また、滅多にありませんがドラム缶内面に「バリ」等が発生しており装着時にそれに引っ掛かって外傷する場合も考えられます。
そして意外と多いのが打痕でもなく外傷でもない原因で、ドラム缶等に装着する際フィルムがタック状に重なりそれを無理やり押し広げようとした場合、タックの先が非常に固くなって亀裂を発生させてしまう場合です。
 (これは、我々業界用語では、「ホネ」による傷と呼びます。)

最後に、ドラム缶等に内袋の装着を終え内容物を充填するためホース等をドラム缶等に差しむ際、そのホースの先の金属部分がフィルム表面に当たり傷つく場合。
また、充填後の棒等での攪拌時、先端がフィルムにあたり外傷する場合。
などなど・・・・・考えますと原因は星の数ほど考えられきりがありません。

そこで、当社はこのような傷が発生した場合は、傷部分の拡大写真を撮影したうえで検討を進めております。
まず、内側から外側への傷か?それとも外側から内側への傷か?、傷はフィルム2枚の同じ場所に貫通しているのか?していないのか?、傷の引っ掻き方向はどちらへ走っているのか?その長さは?発生枚数は?・・・・などなどもろもろの情報を元に調査を進めてゆきます。
ただ、漏れているという情報だけでは、上記のように無数の原因から断定が困難であります。
ただ意外と大切なのが担当者の液体物流での過去の経験のようです。

◆ 担当者が良くお客様より頂戴する質問

「溶剤系の内容物は充填できる?」
やはり良くあるご質問は、芳香族系有機溶剤が含有された内容物の内袋使用の可否です。
基本的には、ポリエチレンは炭化水素化合物ですので耐有機溶剤性はありません。
ただし、実用面では低濃度の有機溶剤が含有されている内容物に関しては、ある程度の肉厚条件 (当社ASOライナー0.15mm以上)であれば現実論では使用されています。
ただし、0.1mm以下の俗に言う「ポリ袋」は避けた方が無難です。
有機溶剤のフィルムへの透過率は厚みに対して反比例するのです。
ただし、肉厚0.1mm以下の場合でも、樹脂グレードによりある程度耐有機溶剤性が確保されたタイプがありますのでご相談ください。(相当数の知見をもっておりますので自信を持っている部分であります) ただ、一般ポリ袋は絶対避けるべきです!!

それでは、そのような内容物を充填するとどのようになるのか ? ですが、芳香族有機溶剤を充填した場合、経時によりフィルム表面にまず「にじみ」が発生します。
つぎに、その袋の一番弱い部分(シール部分)にストレスが集中し、シールが内容物の重量により簡単に剥離してしまいます。
そうなってしまいますと、フィルムにはもう強度という強度らしさは残っておらず、酷い状態ですとつかむだけでも破袋してしまうようになります。
当社も過去当社開発品であるSR袋( ハイガスバリア 耐有機溶剤袋)の評価試験中ですが、 酢酸エチルを袋に充填しテストを行なっていた際、短時間にいとも簡単にシール剥離が発生するのを目の当たりにしました。
また、破れないにしても強度は極端に低下しており、少し引張っただけでも容易に破れてしまうケースもあります。
また、この症状は充填温度、夏場、冬場などの気温などに正比例して激しくなるのです。
 
「何℃までもつの?」
良く「ポリ袋は何度までもつの ?」と言うご質問を良く頂戴します。
これは、本当に多い質問の一つです。
ただ、これが我々からすると非常にお答えしづらい質問でもあるのです。
と申しますのは、内容物との相性です。

内容物が、水であることはほとんど無く、油成分、芳香族有機溶剤、粘度・・・・等々何らかのフィルムにとっての負荷要因が必ず存在しているからです。
また、90℃と言ってもあくまでも生産ラインの指示計の目盛り値であり、実は接液温度は75度だったり、50度であってもフィルムにストレスクラッキングがかかってしまう油脂成分濃度が高かったり、常温であっても芳香族有機溶剤のコンテントが高かったり・・・・・。
よって、これはお客様とフィルム設計を進めてゆく必要があります。
しかし、ここはお客様からしても内容物の種類や含有コンテントは企業秘密でもあり、一番開示頂き難いデリケートな部分です。
そして何よりも重要なのがテスト輸送です。
また、当社ではポリエチレンにも超耐熱タイプもありますので、ご相談ください。
 
「輸送中にトラブルがあったら?」
「輸送中に袋が破袋する」「シール部分が切れる」などといったトラブルです。
我々製造者のミスによりシール強度が上がっていないため発生したトラブルは別として、ドラム缶やコンティナーなどでの自動車輸送は非常に過酷な状況下にあります。
自動車の発進・停止・カーブに伴う応力、そしてアイドリング時の振動などが数時間に渡ってかけ続けられるのです。
また、夏場ではそれに温度上昇が加わります。

これは、前述した条件に、先ほどご説明した振動と応力がかかってしまうのです。
また、輸送中はエアーハンマー現象と言い急発進・急ブレーキなど、内容物のゆれが未充填のエアー部分と相まって金槌で叩いたような大きな荷重がフィルムにかかるのです。
これがかかると、一般ポリ袋 (平シール袋)では耐える事は不可能です。
よって、出荷時出来る限り未充填部分のエアー抜きは欠かせません。この辺のところは、当社過去の「苦~い」経験の蓄積がありますので是非担当者まで相談ください。
 
「ブレンダーにかけるのだけど大丈夫?」
オープンドラム缶用内袋(当社ASOライナーオープンタイプ)使用時によくあるご質問ですが、「ブレンダーにかけるのだけど大丈夫?」といったご質問です。
ブレンダーとはドラム缶内の内容物を攪拌する攪拌機のことで、ドラム缶で内容物を「調色」や「混練」する場合などで良く使用されます。
簡単に言えば棒の先にプロペラがついていて、それをドラムの中に突っ込んで攪拌する機械です。
これについては、普通のポリ袋の場合は 100%使用不可です。
と言いますのは、普通のポリ袋の場合、底形状が円形であるドラム缶にはピッタリとフィットせず、特に袋両端部分に皺が発生します。(円形容器に普通の袋をセットするので当然ですが・・・・)
この部分が、攪拌時にプロペラに絡まってしまうからです。
よって、こんな場合は、当社の円形内袋であるASOライナーをご使用頂くと問題が解決します。
また攪拌ではありませんが、粘度のある内容物のドラム缶からの抽出方法として、「サーキュレーション抽出」という方法がありドラム缶にサーキュレーターという内容物を吸込して加圧(高粘物)圧送する機械により抽出する方法です。
この場合も加圧する際、一般的なポリエチレン袋ではドラム缶にフィットしていない為うまく抽出できません。
サーキュレーター使用時もASOライナーは威力を発揮します !
 
「強度だけで大丈夫?」
さて、最後に充填する内容物は、「液体」「粉体」「固体」「粘体」などさまざまあります。
また、先ほどご説明させて頂いたとおり粘体でも水から珪酸ソーダまで粘度もさまざまです。
また、粉体もフィルムにストレスのかかる先の尖った「針状」や「球状」「パウダー」など形状もさまざまです。

それでは、フィルム強度を稼ぐには当然フィルム肉厚が厚ければ厚いに越した方が良いのですが、考慮すべきことはそれだけで良いのでしょうか ? 確かにフィルム強度は肉厚が厚ければ厚いほどアップしますが、後々のハンドリングや産業廃棄物(顧客サイドで廃棄物が発生する)や内容物の抽出方法なども詳細に検討していく必要があります。

例えば、当社のASOライナークローズタイプの底板肉厚は0.5mmあります。さらに、胴体が0.3mmですので、肉厚合計が0.8mmにものぼる厚みとなります。
これを、熱溶着するには普通の機械構成では不可能と言えます。
また、総肉厚0.8mmものポリ袋(平シール)の場合ハンドリングも極端に悪く(と言うかハンドリングも不可能)なります。

たとえ、このような袋が技術的に生産が可能としたとして、現実使用時には皺だらけでクラック傷が多発します。
従いまして厚み以外にも袋形状も重要となってきます。
よって、当社のASOライナーはドラム缶にピッタリかつ容易にフィットするよう底部分が丸型形状をしているのです。
また、ハンドリングや注入・抽出方法により所詮フィルムの強度レベルでは耐荷重には歯が立たない場合もあります。
こんな場合は、フィルム肉厚をあげてタフネス性を向上させるためMI(メルトインデックス)の低い原料を選ぶより、容器との追従性やフィット性を考慮する方が好ましい結果を生む場合があります。
要は逆転の発想で、ハードで攻めるよりソフトに攻めるという事です。
シール強度で良く例となるのですが、シール部分が破断しないように頑張り抜いてある値で突然「プチッ」と切れるより、逆に「伸び」てしまった方が好結果をもたらす場合があります。
言い方を変えますと、ゴムは容易く伸びるが切れない ! という考え方もあるのです。

【資料】ポリエチレンの耐薬品性一覧 (アソー株式会社 製品案内より)

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