本文へ移動

37.意外と知らないポリエチレンの分析

今日は、「これを見積りして!!」とお客様からお預かりしたポリ袋。さて、これはどんなポリ袋か??と言う、基本的な問題について触れてみたいと思います。見たところは、ありふれたポリ袋。
 
「あ!・・・透明だからLDPEもしくはLLDPE。半透明でシャリシャリするからHDPE。これで良いのでしょうか?・・・・ しかし、ここに大きなブラックホールが存在している可能性があります!!
 
日用雑貨やゴミ袋用のポリ袋なら、これでも良いのかも知れませんが、化学工業をはじめ医薬品包装。電子デバイス包装では素材選定の裏には大きな要求物性や性能などの重要な『何か??』が隠されていることが間々あります。
 
それには、その素材の分析が不可欠です。
 
ポリ袋を一目見ただけでは1枚物のように見えても、実は何層かの「多層」フィルムという事もあり得るのです。それでは、具体的にその分析を説明させて頂きます。
 
まず、1番目に素材推定のために我々が手掛ける事は、『融点分析(DSC分析)」です。フィルムはその素材により溶融する温度が異なります。その溶融する温度(融点)を計測して素材を大まかに推定する方法です。同じポリエチレンでも、LDPEならLDPEの溶融域。HDPEならHDPEの溶融域があり、それにより識別が可能です。これは、ポリエチレンに限らずPP、PET、ナイロンやEVOHなども識別が可能です。ただし、あくまでも素材断定と言うわけにはいかず、「この融点でお客様のご使用の用途を考えると・・・・だろうな・・・・」の範疇です。
 
また、LDPEだと思っていたポリ袋にいくつかの融点が検出されれば、「HDPEなどの原料のブレンドタイプ」や「多層フィルム」の可能性のチェックも可能な場合があります。
 
さらに、LDPEであれば低融点タイプか高融点タイプ。耐熱要求がある場合やヒートシール特性の情報も得られます。
 
大まかに識別できた素材をさらに、FT-IR分析。赤外線吸光分析により識別精度を上げます。IR分析は、物質に赤外光を照射し、透過または反射した光を測定することで、試料の構造解析や定量を分析する方法で、これにより素材特定が可能となります。
 
よって、融点分析と、分子情報分析(FT-IR)の2つの分析を総合勘案して素材断定を行います。
 
ただし、さらに有機系添加剤を掘り下げるためにはこの分析だけでは限界があり、「具体的にどんな添加剤が使われているか?」「完全な無添加原料か?」まで掘り下げるとなると、さらにその次のステップである「ガスクロマトグラフ」により分析を行います。ガスクロマトグラフによる分析は、検体を高温の気化室で気化させ、各成分を分離測定して物質の同定、ピークと呼ばれるクロマトグラフの高さまたは面積から定量を行う方法です。
 
そして、そのピークには、ポリエチレンならポリエチレンに使用される添加剤のピーク情報があり、そのピーク情報と照合して詳細断定してゆきます。そうすることにより、酸化防止剤であればリン系? フェノール系?(BHTの含有) 混合系? 滑剤の種類は? 濃度は?などの情報を絞り込んでゆけます。
 
有機系添加剤では、以上の方法で分析が可能ですが、無機系(AB剤などのシリカ)ではそうはいきません。要は、ポリエチレン袋の代表的な添加剤分析方法は、酸化防止剤+滑剤チームとAB剤チームのように「有機」と「無機」に分かれるのです。
 
では、次に「AB剤=スリップ剤は?」。無機物であるAB剤は基本的には灰化分析を行います。ほとんどが合成シリカ系ですが、添加濃度も気になるところです。
 
サンプル中の無機化合物を測定する分析法で、サンプルを灰になるまで高温で加熱し、質量が減少しなくなったときの灰の質量やICP(発光分光)分析する方法です。
 
さらに、半導体関連で気になる陽陰イオンは、イオンクロマトグラフ。金属不純物は(ICP-MS ICP質量分析法)による分析など、益々深みにはまってしまいますが・・・・・。
 
ただし、最後に多層フィルムなどの「多層か?単層か?」の判断は、今までと比較いたしますと光学的ではありますが、断層顕微鏡による分析でなければ判明しにくいのです。この分析で各層間の厚みも判明致します。そして、総合的に判断してそのフィルムの材質が判明するのです。
 
たかがポリエチレン。されどポリエチレンです・・・・・・・・・・・・か???!!
公式サイトはこちらから
TOPへ戻る